総務省統計局によると日本の人口は、2008年から減少に転じております。
当時は社会問題としてニュースなどでクローズアップされていましたが、13年の月日の経過とともに、人口減少は常態化し、話題になることは減った印象です。
今回は、「人口減少・少子高齢化」についてわかりやすく解説したいと思います。
目次
1時間目 人口減少とは
そもそも、日本はどうして人口が減少しているのですか?
産まれる子供の人数が減っているからじゃ。つまり「少子化」が原因だな。
少子化・合計特殊出生率・人口置換水準とは
- 少子化とは?
- 子供の産まれる人数が減ることです。
では、どのくらい産まれる人数が減ったら少子化になるのでしょう。
ここで、「合計特殊出生率」を使います。
- 合計特殊出生率とは?
- 一人の女性が一生の間に産む子供の人数のことです。
※正確にいうと、15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの。
15〜 49歳は女性が出産可能な年齢です。
厚生労働省によると、2020年の合計特殊出生率(以下「出生率)は1.34でした。
出生数・合計特殊出生率の推移
出生率は2005年の1.26が底だね。
でも出生数はまだまだ減っている!
ちょっとブレイク
「ひのえうま(丙午)」とは?
- 60種類ある干支(えと)のひとつ(つまり60年に1回)。
- 「ひのえうま生まれの女性は気性が激しく夫を不幸にする」という迷信が、1966年(ひのえうま)の出生率を大きく下げた原因。
- 次の「ひのえうま」は2026年だが、今時そんな迷信は・・・?
夫婦2人から平均1.34人しか子供を産まなければ、人口が減っていくことは想像できると思います。
では、出生率がどの水準を越えれば、人口は増えていくようになるのでしょうか?
ここで、「人口置換水準」という言葉が出てきます。
人口置換水準・・・人口が増えも減りもしない均衡状態になる出生率の水準。
- 日本では2.07がこの水準です。(国立社会保障・人口問題研究所)
少子化の理由
出生率1.34は人口置換水準の2.07を大きく下回っている。
だから人口が減少するんですね。
少子化となっている理由は大きく3つ。
①晩婚化 ②未婚化 ③出生力の低下
少子化の理由① 晩婚化・・・初婚年齢が遅くなること
- 初婚が遅くなると、一生で産むことができる子供の人数が減りやすくなります。
男女ともに初婚年齢は遅くなっているね。
少子化の理由② 未婚・・・結婚しないこと
- 子供は結婚して産むことが大半なので、結婚しないことは、出産数の減少に影響します。
男女ともに生涯未婚率は右肩上がりで伸びている。
特に男性の未婚率は2割以上と高いね。
晩婚・未婚の原因
- 女性の社会進出・独身生活の気楽さ。
- 良い相手がいない。
- 低年収、非正規雇用の増加で経済的な不安がある。
少子化の理由③ 出生抑制・・・子供の産む人数を理想人数となるように抑制すること。
主な原因
- 教育コストの増加・・・子供一人にかかる費用は1,000〜2,000万円(私立ではそれ以上)といわれている。
- 仕事と子育ての両立・・・子供が多いと両立が難しくなる。
- 晩婚化・・・上述の通り、結婚が遅いと産むことができる人数に制約ができる。
このように、子育てはお金がかかるし、仕事と子育ての両立が難しいことが「少子化」の原因の一つと考えられます。
- 人口が減少している理由は少子化である。
- 少子化の理由は「晩婚化」「未婚化」「出生抑制」
- 女性の社会進出などライフスタイルの多様性や経済格差(非正規雇用)、教育コストの負担が原因になっている。
2時間目 少子高齢化とは
次は、人口減少と同時並行で進む「少子高齢化」についてです。
少子高齢化とは、人口に占める若年者の割合が低下し、高齢者の割合が増加することをいいます。
少子化は説明したから、ここでは高齢化を説明するぞ。
高齢者、高齢化率、高齢社会とは
- 高齢者の定義ってあるんですか?
- WHO(世界保健機関)は65歳以上の人を高齢者としています。
高齢化率・・・人口に占める高齢者の割合。
高齢化社会・・・高齢化率7%以上の社会
高齢社会・・・・高齢化率14%以上の社会
超高齢社会・・・高齢化率21%以上の社会
日本は「超高齢社会」に突入しているんじゃ。
グラフをみると、日本の高齢化率は右肩上がりですね。
世界と比べてどうですか?
主要国における高齢化率の推移
日本は世界一の高齢化国家。
韓国やイタリアも高齢化は進んでいる。
どうして高齢化が進むのだろう?
高齢化の原因
高齢化の原因(日本)
- 平均寿命が延びているから
→日本の平均寿命(2020年)・・・男81.64歳 女87.74歳 - 人口の減少
→人口が減少すると、相対的に高齢者の割合が高くなる
日本の平均寿命(84.3歳)は世界一です。2位がスイスの83.4歳。3位が韓国の83.3歳。
日本人が長生きの理由は、食生活(和食)や医療、公的保険制度の充実などが考えられます。
違いを覚えよう
- 平均寿命・・・現在0歳の人が何歳まで生きられるかという予測値
- 平均余命・・・ある年齢の人が何歳まで生きられるかという期待値
- 健康寿命・・・健康上の問題で日常生活を制限なく生活できる期間
- 日本は世界一の超高齢社会に突入している。
- 平均寿命の延伸と人口減少が高齢化率上昇の原因である。
- 長寿の理由は、食生活や医療、公的保険制度の充実などが考えられる。
3時間目 人口減少・少子高齢化の問題点
最後に、人口減少・少子高齢化の問題点について説明しよう。
よろしくお願いします!
人口減少・少子高齢化の問題点
- 労働力不足
- 内需の減少・低成長
- 社会保障制度の持続性への影響
- 税収減、国家財政への影響
問題点① 労働力不足
少子高齢化が継続すると、労働人口の指標である生産年齢人口が減少します。
生産年齢人口とは年齢が15歳以上64歳以下の人口のことです。
みずほ総合研究所は、労働人口がこの40年で2,000万人以上減少すると予測しています。
雇用不足が深刻化すれば、経済活動は停滞します。
そこで、雇用不足解消のカギとして、AIやロボットの性能向上・導入が期待されています。
労働力人口と労働率の見通し
問題点② 内需の減少・低成長
人口が減るということは、消費者(お客様)の数も減るということです。
消費者が減れば、国内消費量が減少します。
国内消費が減ることを内需の減少といいます。
企業の売上が減ることになりますので、経費削減を行わなければ利益も減ります。
市場が縮小する環境では、設備投資が鈍くなりますので、景気は悪化しやすい状況になります。
また企業は少しでも商品を販売しようと価格を下げる行動をとりますので、デフレ(物価下落)に陥りやすくなります。
国内需要の低下を受けて、海外輸出やインバウンドの取り込みを図る企業が増えていましたが、新型コロナウィルスの感染拡大によってインバウンド需要は蒸発してしまいました。
覚えたいワード
- 人口ボーナス・・・人口が増加 → 労働力人口が増加 → 成長率が高くなること
- 人口オーナス・・・人口が減少 → 労働力人口の減少 → 成長率が低くなること
問題点③ 社会保障制度の持続性への影響
高齢者が増えることで、社会保障費(公的保険・年金など)は増加します。
社会保障費は現役世代が保険料や税金として負担しているので、高齢化率が高くなると、現役世代の負担はどんどん重くなります。
これまで高齢者1人を現役世代2人以上で支えていました。
しかし、2045年には高齢者1人を現役世代1.4人で支える予測となっております。
とても支えきれませんので、今の現役世代が年金を受給する頃には、受給年齢のアップや受給金額の削減が予想されます。
「年金2,000万円問題」といって、年金だけでは足りないから老後資金として2,000万円は自分で貯めようという話が2019年の金融庁の金融審査会がまとめた報告書で話題になりました。
しかし、将来的には、2,000万円を超える金額の用意が必要になるかもしれません。
問題点④ 税収減・国家財政への影響
人口が減少すると、税収(税金の収入)の減少も予想されます。
国家も地方自治体も借金(国債・地方債)に依存しております。
国と地方合わせて約1,200兆円に達します。
税収が減れば、借金の返済は苦しくなります。
借金(利払い含む)が返せなくなると、デフォルト(債務不履行)となり、国債の信用は失墜し暴落します。
円の価値も大きく下がることになるでしょう。
金融機関の多くは国債を保有しておりますので、金融機関にも影響が及びます。
円が暴落すれば、原油などの輸入価格も大きく高騰することになるでしょう。
問題点⑤ 地方の過疎化
人口減少・少子高齢化の問題は、大都市より地方から顕在化します。
地方に住む若者が望む職がないことから都会に移住してしまうのが主な原因です。
こうして、東京一極集中、地方の過疎化現象が起きます。
日本創生会議が発表した「消滅可能性都市」というショッキングな言葉があります。
人口が減少すれば、社会インフラ(警察、消防、病院、銀行、スーパーなど)が維持できなくな理科、街としての機能が果たせなくなります。
既にスーパーが撤退し、買い物難民(弱者)という言葉も生まれています。
まとめ
人口減少・少子高齢化という縮小スパイラルは、地方から顕在化していますが、日本全体、ひいては世界全体に関わる大問題です。
抜本的な解決策はなく、出生率が上がるような環境をつくるか、移民を受け入れるしかなさそうです。
高齢化率が上がると政策も高齢者寄りになってしまい、なかなか若者向けの政策に目が向けられません。
まずは、こうした問題を理解した上で未来予想し、一人一人に何ができるか考えて行動することが大切です。